Posted by 水谷 嘉仁 - パフォーマンスソリューション エキスパート

1.  Micro-Moments を見極め、「最適なメッセージ」を「最適なタイミング」で届ける



世界中で 1 日に検索数は 30 億回を越え、日々検索される語句の 15% は今までに検索されたことがありません。*1

検索語句のレポートを分析していると、こんなのどうやって検索したの?と思うことが多々あります。コピペや音声検索でしょうか、特にモバイルの検索語句では、非常に長い住所であったり、まるで温泉の効能のような文章など予測することが難しいものが多くあります。おそらくどこか旅行先の温泉をさがしている Micro-Moments とも推測できます。

こうした多様化した生活者の Micro-Moments を柔軟に捉えるためには、従来のキーワードによるターゲティングでは限界があります。そこで、ターゲティングを自動化する「動的検索広告」を活用すると、自社のウェブサイトに関連する検索語句に対して自動で広告を配信することが可能になります。

その動的検索広告を国内で一番活用し、生活者の Micro-Moments を的確に捉えていらっしゃる楽天市場とリクルートライフスタイルに検索広告キャンペーンのデータを提供頂き、今年の 3 −4 月にかけての 1 日における時間帯別の Micro-Moments をそれぞれグラフ化してみました。


楽天市場のデータより


オンラインショッピングの Micro-Moments をデバイスごとに見てみると、モバイルのクリック数が終日においてパソコンを上回っています。生活者が「何か買いたい」と思ったときに、いかにモバイルで情報を検索しているか読み取ることができます。

ちなみに昨年のデータと比べると、昨年の同時期にはなんとパソコンのクリック数が終日においてモバイルを上回っていました。この 1 年で、モバイルのクリック数が 3 倍以上に伸びており、オンライン ショッピングはモバイルファーストになったと言えるでしょう。




リクルートライフスタイルのデータより


レストランでは、生活者が「何か食べたい」とレストラン情報を探すクリックは、お昼と夕方の食事時にピークを迎えます。特に夕方には、パソコンとモバイルのピークに時差があるのも特徴的です。やはり、モバイルでは外出先での直前の情報検索が多いことが想像され、まさにモバイルならではの Micro-Moments であると言えるでしょう。

また美容では、生活者が「髪を切りたい・ネイルをしたい」とモバイルで情報を探す時間帯には、1 日の中で大きく 4 つのピークがあるようです。察するに、学生であれば授業の合間の休み時間や、会社員であれば終業時間でしょうか。こと美容についての Micro-Moments は圧倒的にモバイルからになっています。




個々の生活者の Micro-Moments を継続的に捉える


ある調査によると、95% のサイト訪問者は初回訪問時にコンバージョンしないまま離脱し*2、また、49% のサイト訪問者はコンバージョンするまでに 2 −4 回再訪問するとも言われております*3。一方で、ターゲットを絞った広告は、その効果の度合いが 2 倍になるというデータも出ています*4。せっかく認知・検討段階でサイトを訪問した生活者を、コンバージョンまで落とし込めるかは、いかに「個々」の生活者の Micro-Moments を「継続的」に捉えられるかにかかってきます。

そのためには、サイト訪問者との接点をできるだけ多く把握する必要があります。まず最初に、ウェブサイトに訪れた生活者のサイト内での行動履歴を収集し、適切にセグメント化します。ここで、陥りがちな「策士策に溺れる」パターンに気をつけてください。より詳細に生活者をセグメント化しようと、リマーケティング リストを細分化し過ぎてしまい、実際の広告運用に活用できなくなるケースをよく見かけます。

そんな時は、Google アナリティクスのスマートリストをご活用ください。スマートリストは Google アナリティクスの 250 以上ものシグナルを使って、サイト訪問者の中からコンバージョンの可能性の高いパターンを分析し、リマーケティング リストを自動で作成します。

データ収集とセグメント化の準備ができたら次は、実際の広告運用です。検索広告・ディスプレイ広告ともにリマーケティングを活用して、個々のサイト訪問者が再度検索をしたりコンテンツを閲覧している、まさにその Micro-Moments を逃さず再びアピールします。

また、サイト未訪問者に対しても、Google ディスプレイ ネットワーク、YouTube, Gmail を通じて、生活者が購入を検討している Micro-Moments を見極め、積極的にサイト訪問を促すことが可能です。

主にディスプレイ広告は認知・検討からコンバージョン、検索広告は検討からコンバージョンにかけてよく機能します。たとえ検索広告・ディスプレイ広告のキャンペーンを別々に運用していても、広告を通してリーチする生活者は同じであると考えるべきでしょう。リマーケティング戦略としては、認知・検討・コンバージョン、そしてその後のリレーションシップの強化まで、個々の生活者の  Micro-Moments を検索・ディスプレイ ネットワークをまたいで包括的に捉える必要があります。


自動化の活用


Micro-Moments を捉えるベストプラクティスとしては、ターゲティング、広告、入札単価を自動化することが効果的です。検索ネットワークでは、動的検索広告と検索広告向けリマーケティング リストと自動入札の目標 CPA を併せて活用することで、インデックスされたウェブページを活用し、訪問歴がある生活者に向けメッセージと入札単価を最適化することが可能になります。

一休レストランでは、ターゲティング・広告・入札単価の調整のすべてを自動化することで、モバイルのコンバージョン数を昨年対比で+136% に倍増することに成功しました。また、動的検索広告の検索語句レポートより、鉄板焼きやアフタヌーンティーの需要の変化をタイムリーに捉えて特集ページを開設し、それらをディスプレイ広告として運用することで新規顧客の獲得にも取り組むことができました。



ディスプレイ ネットワークで Micro-Moments を捉えるには、ぜひ、動的リマーケティングと自動入札の目標 ROAS を併せて活用してみてください。そうすることで、訪問歴がある生活者に向けメッセージと入札単価を最適化することが可能になります。

楽天市場では、動的リマーケティングで手動入札と自動入札をテストしたところ、自動入札において販売数では +12%、売上では +14% の増加が確認できました。その後、予算の拡張や目標  ROAS を調整しながら販売数を 2.6 倍、売上を 2.9 倍に成長させるまでになりました。まだ手動で入札単価を調整されているキャンペーンがあれば、ぜひ、活用してみてください。



モバイルサイトのユーザー エクスペリエンス


「最適なメッセージ」を届けるということは、広告だけではありません。広告を通して生活者がたどり着くウェブサイトも重要な役割を占めます。せっかくモバイルでの Micro-Moments を見極めても、モバイルサイトでのユーザー エクスペリエンスが良くないと簡単にはコンバージョンには結びつきません。

ユーザー エクスペリエンスの悪いモバイルサイトで広告を運用することは、野球で例えるなら打率の悪いバッターをひたすら打席に送るようなものでしょう。基本的なモバイルフレンドリー施策を抑えた上で、モバイルサイトのユーザー エクスペリエンスを高めるための 25 の設計指針も併せてご確認下さい。

LIVESENSE では、ユーザー エクスペリエンス改善の結果、コンバージョン率(応募率)は 16.7 ポイントも改善され、モバイルからの応募数が昨対比で +40% も増加しました。


2. Micro-Moments を活かせたか効果を測定する


多くの方はオンラインでのラスト クリックのコンバージョンを効果測定の指標にされていることでしょう。現時点では弊社の自動入札機能もラスト クリックのコンバージョンを基準にしているのでこれは仕方がないかもしれません。

ただし、デバイスをまたいだコンバージョンは統計的に 95% の信頼がないとレポートに表示されません。つまり、この数字がレポートされているキャンペーンについては確実にデバイスをまたいでコンバージョンしている生活者がいるといえます。生活者のモバイルでの  Micro-Moments を的確により多く捉えるためには、まずは、オンラインでのラスト クリックのコンバージョンを超えて、推定合計コンバージョンのレポートを見ることから始めてください。


3. Key Takeaways


まずは可能な限りの自動化をしてください。ターゲット、広告、入札単価のすべてを自動化することが、Micro-Moments を効率的に活かすポイントになります。

そして、モバイル UX の最適化をしてください。素晴らしいユーザー エクスペリエンスを提供することが、Micro-Moments を最大限に活かすポイントになります。

最後に、アトリビューションを活用しはじめてください。ラスト クリックを超えたコンバージョンを考慮することが、これまで以上に Micro-Moments を適切に捉えるポイントになります。

次回は "Micro-Moments を活かしてリレーションシップを強化する" というテーマで、弊社パフォーマンスソリューション エキスパートの緑川から投稿します。


連載:「Google と考える Micro-Moments」- 他の記事はこちら


第 1 回: マーケターにとって見逃せない瞬間「Micro-Moments」とその活かし方
第 2 回: Micro-Moments を活かして認知を獲得し検討を促す
第 4 回: Micro-Moments を活かしてリレーションシップを強化する




*1 Google 調べ
*2 Understanding Shopping Cart Abandonment(ショッピング カートの放棄に関する分析)、Forrester Research、2010 年 5 月
*3 Google/Compete によるスポーツ用品に関する調査:(2011 年 9 月~2012 年 9 月)クリックストリーム BF02(アクセスしたブランドの数)
*4 Media Economy Report, Magna Global, 2014 年