Posted by E-Commerce 業界担当 インダストリーマネージャー 本橋徹 / オーディエンス ソリューション本部 統括部長 須田尚宏


インターネット・ショッピングモール「楽天市場」は世界的にもユニークな B2B2C 型のマーケットプレイスです。楽天市場の運営においては、常に売り手と買い手の利便性を追求し、膨大なデータを分析しながら科学的アプローチに取り組んでいます。

この事例では、自動入札 vs 手動入札 A/B テストを経て、キャンペーンを完全自動化することで大きな売上向上を達成した、楽天市場の取り組みをご紹介します。デバイスの多様化により増えたユーザー接点(Micro-Moments)を自動化によって効率良く捉えた例です。


導入の背景と戦略


楽天市場では、動的リマーケティングを利用することで「ターゲティング」と「クリエイティブ」は既に自動化していましたが、「入札」はこれまでの知見を活かし手動で商品カテゴリ、リーセンシー、広告サイズで広告グループを分けて運用していました。そこで、さらなる効果アップの可能性の 1 つとして、広告グループを統合し、自動入札を検証することになりました。

2014 年 9 月に、入札戦略ツールの 1 つ、目標広告費用対効果(広告費用対効果:ROAS の目標値を設定し、最適化に向け自動で入札単価を調整する機能)を使って自動入札 vs 手動入札 A/B テストを行い、結果をもって入札自動化を検討するという計画がスタートしました。


自動入札(目標広告費用対効果:ROAS 機能)の仕組みと効果


自動入札(目標広告費用対効果:ROAS 機能、詳細リンク先説明もご参照ください)を適切に活用すれば、手動で入札単価を設定するよりもコンバージョン数(販売数)や売上を伸ばせるほか、キャンペーン管理の時間を大幅に減らすことができます。

その仕組みを簡単にご説明します。自動入札は、AdWords の自動入札アルゴリズムが各広告オークションの状況に関するシグナルを分析し、広告クリックがコンバージョン(販売)につながる確率に応じて入札単価を毎回自動で設定しています。また、個々のシグナルだけでなく、シグナルの相関性も考慮して入札単価を算出します。

下記は分析されるシグナルの一例です。自動入札は、手動での入札では一度に加味しきれない量のシグナルを多角的かつリアルタイムに分析し、入札することで、手動に勝る最適化を実現するのです。



施策後の成果


2014 年 9 月、リマーケティング リスト内のユーザーを均等なグループに分け、同予算でキャンペーンを展開し、自動入札 vs 手動入札 A/B テストを実施しました。結果、手動入札キャンペーンと比べて、キャンペーン費用は -12%と抑えながら、自動入札キャンペーンではコンバージョン数(販売数) +12%、売上 +14% という成果をあげました(図 1 参照)。

この結果を受け、楽天市場は入札の自動化を導入しキャンペーン(ターゲティング、広告、入札)をすべて自動化しました。その後、投資を拡大し 2015 年 4 月には、コンバージョン数(販売数)は 2.6 倍、売上は 2.9 倍にまで拡大しました(図 2 参照)。現在では、入札調整含むこれまで手動で行っていた実行フェーズに関する業務はほぼ自動化が完了し、その分の時間は今後のユーザー戦略に関するディスカッションや新施策のチャレンジなどに一層割かれています。

(図 1)手動入札 vs 自動入札テスト結果
(図 2)自動入札導入後の推移



今後の展望


「昨年 9 月の導入より、継続的に高いパフォーマンスで運用を行うことができております。導入当初は、ターゲットとした ROAS 値よりも高い成果が出てしまう、ROAS 値変更時にパフォーマンスが安定しないなど、いくつか問題点がありましたが、度重なる Google 側のチューニングにより現在は解消されており、順調に運用をしております。 また今後は、検索広告についてもテスト運用を進め、導入していきたいと検討しております。」
(楽天市場事業マーケティング部アフィリエイト・マーチャンダイザーグループ ディスプレイチーム 門田 志穂氏)



*PDF 版の事例はこちらからダウンロードできます。

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